71.中古車の事故歴とは?修復歴との違いから見分け方まで専門家が解説
中古車の事故歴とは?修復歴との違いから見分け方まで専門家が徹底解説
中古車を購入する際に気になる「事故歴」について、正しく理解できているでしょうか。
事故歴がある中古車は本当に危険なのか、価格にどの程度影響するのか、購入前に知っておくべき重要な知識があります。
この記事では、中古車業界の専門家が事故歴の定義から修復歴との違い、見分け方から価格への影響まで詳しく解説いたします。
中古車の事故歴とは
中古車の事故歴について正しく理解するために、まず基本的な定義を確認しましょう。
事故歴の意味を把握することで、中古車選びの判断材料として活用できます。
事故歴があるからといって必ずしも問題があるわけではないことも、重要なポイントです。

中古車における「事故歴」とは、その車両が過去に交通事故によって損傷を受けた履歴を指します。
具体的には、他の車両との衝突や建物・構造物への接触などが該当し、車両に何らかの損傷が発生した場合に事故歴として扱われます。
重要なポイントは、事故歴は必ずしも運転者の過失によるものとは限らないことです。
たとえば、駐車中に他の車両にぶつけられた場合も事故歴に含まれます。
一方で、台風や洪水などの自然災害による損傷は、業界では「冠水車」「水害歴車」として別に分類されるのが一般的で、事故歴とは区別して説明されるケースが多い点も理解しておきましょう。
事故歴として扱われる損傷の範囲は、軽微なものから深刻なものまで幅広く存在します。
たとえば、バンパーの擦り傷や小さなへこみといった軽度の損傷を事故歴とする場合もあれば、車両に大きな衝突による構造的な損傷があった場合のみを事故歴とする場合もあります。
ただし、中古車業界では「事故歴」という用語の明確な統一基準は存在せず、販売業者や査定基準によって解釈が異なるのが実情です。
そのため、軽微な損傷は事故歴として扱われず記録に残らないことも多く、必ずしも「事故歴=重大な欠陥」とは限りません。
重要なのは、事故歴があるからといって直ちに車両の安全性や機能に問題があるわけではないという点です。
実際には、安全性に影響しない範囲の修理で済んでいるケースも少なくありません。
事故歴と修復歴の重要な違いとは
中古車検討時に混同しやすいのが「事故歴」と「修復歴」の違いです。
この違いを理解することで、中古車の真の価値を判断できます。
修復歴の有無は車両の安全性に直接関わる重要な要素で、価格にも大きく影響します。
事故歴のみの場合は、車両への影響が限定的な場合が多いのです。
修復歴とは、車両の骨格部分(フレーム)に損傷があり、それを修理または交換した履歴のことを指します。
一般財団法人日本自動車査定協会では、車両の骨格部分として以下の部位を定義しています。
(参考:一般財団法人日本自動車査定協会「8.修復歴の考え方」)
代表的な部位として、フレーム(サイドメンバー)、クロスメンバー、ピラー、ルーフパネル、フロアパネル、トランクフロア、ラジエータコアサポートなどが挙げられます。
これらは「骨格部分」として車両の安全性に直結するため、損傷・修理歴があると修復歴に該当します。
これらの骨格部分は車両の安全性や走行性能に直接影響する重要な構造部分で、修理後も本来の性能を完全に復元することは困難とされています。
事故による損傷があっても修復歴に該当しないケースも多数存在します。
バンパーの交換、ドアのへこみ修理、サイドミラーの交換、フロントガラスの修理、外装の塗装修理などは、骨格部分に影響しない損傷として扱われます。
これらの修理は車両の安全性や走行性能に大きな影響を与えないため、修復歴車としては扱われず、査定価格への影響も限定的です。
日本オートオークション協議会の「修復歴判定マニュアル」では、カードサイズ(8.5cm×5.4cm)未満の小さなへこみや亀裂は修復歴に該当しないとされています。
(参考:一般社団法人日本オートオークション協議会)
事故歴・修復歴が中古車価格に与える影響
中古車の価格は事故歴や修復歴の有無によって大きく左右されます。
価格への影響度合いを理解することで、適正な価格での購入や売却が可能になります。
特に修復歴の有無は、車両の価値を決定する重要な要素として位置づけられています。

修復歴がある車両は、同じ年式・走行距離の修復歴なしの車両と比較して、大幅な価格の減額が行われます。
骨格部分の修理が行われた車両は、見た目には完璧に修理されていても、走行性能や安全性に潜在的な問題を抱えている可能性があります。
修復の程度や部位によっては、直進安定性に影響が出たり、高速走行時に振動が生じたりする可能性があります。
ただし、すべての修復歴車でこうした症状が出るわけではなく、修理の品質によって差があります。
修復歴車は、修復の程度や部位によって価格への影響が大きく異なりますが、一般的に大幅な減額対象となります。
修復歴に該当しない軽微な事故歴のみの場合、価格への影響は比較的限定的になります。
外装部分の小さな傷やへこみ、バンパーの交換履歴程度であれば、車両の機能や安全性に影響がないため、大幅な減額は行われません。
ただし、事故歴があることで中古車としての商品価値は若干低下するため、完全に無傷の車両と比較すると価格差は発生します。
中古車の事故歴・修復歴を見分ける方法
中古車購入時に事故歴や修復歴の有無を正確に把握することは重要です。
販売業者には告知義務がありますが、自分でもチェックできる方法を知っておくことで、より安心して購入できます。
プロの査定士が使用する確認方法から、一般の方でも実践できる見分け方まで解説します。

最も確実な確認方法は、点検記録簿や整備記録簿の確認です。
これらの書類には、12ヶ月点検や24ヶ月点検の際に行われた作業内容や整備履歴が詳細に記録されており、大きな修理や部品交換の記録も残されています。
車両の査定書や鑑定書がある場合は、修復歴の有無が明記されています。
信頼できる販売業者であれば、これらの書類を積極的に開示してくれるため、購入前に必ず確認を求めることが重要です。
書類による確認と併せて、車両の外観からも事故歴や修復歴の痕跡を確認できます。
塗装の色合いが部分的に異なっていたり、パネルとパネルの隙間が不自然だったりする場合は、修理の痕跡である可能性があります。
ドアやボンネット、トランクなどの開閉部分の動きが滑らかでない場合や、異音がする場合も要注意です。
車両を上から見下ろした際に左右の対称性が保たれていない場合は、骨格部分に損傷があった可能性を示しています。
自分での確認には限界があるため、不安な場合は専門家による確認を依頼することをお勧めします。
一般財団法人日本自動車査定協会では、修復歴の判断基準を定めており、中古車販売業者はその基準に基づいて査定を行います。
信頼できる販売業者であれば、査定書や鑑定書を提示してくれるため、購入前に確認するのが安心です。
特に高額な中古車を購入する場合は、購入前の専門的な点検を受けることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
事故歴車・修復歴車購入時の注意点
事故歴や修復歴がある中古車でも、適切な知識と注意点を理解した上で購入すれば、コストパフォーマンスの良い選択となる場合があります。
重要なのは、リスクを正しく理解して納得した上で判断することです。
価格の安さだけでなく、安全性や将来的なメンテナンス費用も考慮した総合的な判断が必要です。

事故歴車や修復歴車を購入する際は、通常の中古車購入以上に慎重な確認が必要です。
どの部分にどのような損傷があり、どのような修理が行われたのかを詳細に確認し、修理を行った工場や使用された部品についても可能な限り情報を収集します。
修理から経過した期間も重要な判断材料で、ある程度時間が経過して問題なく使用されている車両の方が、修理の品質について判断しやすくなります。
事故歴車や修復歴車を購入する場合は、アフターサービスや保証内容について特に注意深く確認することが重要です。
一般的な中古車以上にトラブルが発生する可能性があるため、購入後のサポート体制が充実している販売店を選ぶことをお勧めします。
保証期間や保証範囲、修理が必要になった際の対応方法について事前に明確にしておくことで、購入後の安心感が大きく変わります。
事故歴に関するよくある質問
Q1. 事故歴と修復歴はどちらが中古車価格に影響する?
一般的に、修復歴のある車両の方が価格に大きな影響を与えます。
事故歴のみで骨格部分に損傷が及んでいない場合は、価格への影響は限定的ですが、修復歴車は安全性や走行性能に不安が残るため、大幅に評価が下がるのが通常です。
Q2. 軽い接触事故でも「事故歴」として扱われる?
ケースによります。バンパーの小さな傷やドアのへこみ程度なら、事故歴として扱われないことも多いです。
ただし、販売店や査定基準によっては軽微な損傷でも「事故歴あり」と記録される場合があるため、購入時は必ず販売店に確認しましょう。
Q3. 事故歴や修復歴を自分で確認する方法はある?
書類(点検記録簿や査定書)を確認することが最も確実です。
さらに、車両の外観から「塗装の色味の違い」「パネルの隙間」「開閉の動きの不自然さ」などをチェックするのも有効です。
ただし、自分だけで判断するのは難しいため、不安な場合は第三者機関や専門家の査定を依頼することをおすすめします。
まとめ|中古車の事故歴を正しく理解して賢い選択を
中古車の事故歴について理解を深めることで、より適切な車両選びができるようになります。
事故歴と修復歴は異なる概念で、修復歴の有無が車両の安全性や価格に与える影響は大きいものの、事故歴のみの場合は限定的な影響にとどまることが多いです。
重要なのは、事故歴や修復歴がある車両を一概に避けるのではなく、その内容を正確に把握し、自分の使用目的や予算に合わせて適切に判断することです。
一般財団法人日本自動車査定協会などの公的機関が定める基準を理解し、正しい知識に基づいて判断することが、満足のいく中古車購入につながります。
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